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管理人の萌や日常を徒然なるままに。。。
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趙雲、馬超と続いていたパラレルの蛇足。
あのまま終わるんでもいいかなと思ってたんだけど、
ハッピーエンドが好きなので続けてしまいました…。

あの話はアレで終わりだな、という方は見ないで下され…。
ハッピーエンドが好きでパラレル大丈夫な方のみ続きからどうぞ~

にしても、やっぱり携帯だと改行がなくなっちゃう。
どうしてだろう?



日記らしい事を書くと…。
胃を壊しました。
食中り→吐く→吐く→吐く→胃が荒れる

なにやってるんだか。

 
隣の部屋が閉まった。
何の音もしない。不安に思った。人の気配というものを感じ取れなかった。
根が張ったように動かなかった足が、壁に向かって歩き出す。
手の平をつけても、馬超の気配などわかるはずも無い。
額をつけても、息を止めても、何も、なにもない……解らない。

今更馬超に触れても、辛いだけだ。
そんな事は、解っている。だから、逃げたのではないか。


けれど。
よもや彼が自殺などするはずも無いのだけれど。


そっと、ドアノブを回した。
かちゃりという音が妙に大きく聞こえる。
彼の部屋に向かって数歩で、つま先に何かが当たって転がる。
軽く膝を曲げて、指先で摘んで直ぐ、それが何かわかった。
ぐしゃぐしゃになったそれを広げると、彼の名前が書いてある。

漏れたのは、苦笑だった。

確かに、彼は私を愛してくれていた…証が今ここにある。

少なくとも途中までは、私達は二人だった。
きっと、そう、この結末は私が描いてしまったのだろう。
彼は選択したのだ。自分で、一度、『家族』というものを。
精神的な物だけではない、確かな契りを。

けれど、彼がこれを得たのは、私のせいだ。
フローリングを歩く、ダイニングにある棚の左から二番目。
深さの無い引き出しからクリアファイルを取り出した。
そこに入っている紙は、三枚。

一枚には私の名前が書いてある。
馬超が丸めて投げ捨てたものと同じ紙。
…唯一、私達のようなものが家族になるための紙。
だが、家族になるには、もう一枚必要だ。


私は、この勇気が無かった。



もし、この紙を突き付ける勇気が私にあったのなら、お前は泣かずに済んだのかな……。
それとも、もっと早くこの日を迎えていたんだろうか。


一枚、テーブルに紙を置いた。
馬超と、家族になるための紙。

もう一枚、テーブルに紙を置いた。
馬超が、……今の家族を捨てるための紙。

私達が、こう言う関係を築いて二年。
長かったのかな、短かったのかな……
けれど、惰性で付き合えるほどの短さでも感情でも無かった。
本気で愛し合って、求めていたのに、私は最後の最後で臆病になった。
お前は求めてくれたのに、私は選べなかった。
それまで、本気だったものが、気の迷いで終わることが出来る軽いものになってしまった。
『本気』を、私が捨ててしまっていたんだね。

どうしてだろう。
何も要らないほどお前を欲しかった。
触れたところからぐずりと形を無くすように、あんなに一つになった。
熱も言葉も身体も交わって、持てる全て表せる全てを分け合って、
お前を手に入れた気でいたのかもしれたい…本当はもっと、もっと、お前が足りなかった。
今、お前の名を呼べば、その数文字の中に私の気持ちの全てが込められる気がするよ。
手を握り、身体を抱き寄せて、お前の名を呼べは、中へ中へと集まる哀しさも、愛しさも、全部……。




背後で、扉が開いた。
戸惑った気配と、歩み寄る音。

何故か、さっきは流れなかった涙が出た。
こう言うときは、泣くものかな?
最後は、泣くものかな……。

「私はね、父親になろうと思ったんだ」

その方が、近いと思った。なにより、家族として。

「もう、言い訳にしかならないけれど
 …お前が、失わなければならない代償を、切り出す事が、出来なかった」

抱きしめて、謝りたかった。
私の本気を、私はお前にあげられなかった。
死んでもいいくらい愛していたはずなのに、
最後の最後で私がなったのはただの偽善者。
愛していると片手でお前を抱きながら、
お前にいい姿ばかり見せようと片手で『本気』を隠してしまった。

本当は、名前を記した時に、していなければならない覚悟を、手折ってしまった。
……今更だね。
私は卑怯だ……。
こんな時に、お前が丸めて棄てた意思を、広げて見せる。



でもね。

「何も要らないはずだったんだ、お前が居れば、お前以外の何もかも……」

テーブルの上の紙をまとめて、馬超を振り返る。
何かを語ろうとした馬超の目は、見たことが無いほど真っ赤だ。
抱きしめたい。けれど、今の私達は、他人。

……それだけなんだね。
他にはなにも無くなってしまった……。

「求めていたはずなのに、知らない内に護っていた。
 まだ何も無かったのに…空っぽばかり、護っていた」

紙を持って、コンロに近付く。
馬超の制止が聞こえたけれど、私は迷わず…火をつけた。

「趙雲…ッ」

止めに入った馬超の腰をを抱き留める。
燃えはじめた紙をシンクに投げ入れた。音も無く、紙は真っ赤になり、直ぐに黒くなる。
しゅん、と赤い色が消えると、項垂れた馬超が白い項を見せながら、
聞いた事のない、震えた声で呟く。
私は本当に、お前の本の一握りしか知ることをしなかった。
笑っている、お前だけを……それを今、痛感する。

「……もう、終わったんだな……」
「そうだね…。私達はそれを選んでしまった……」

灰に水をかける。幾つかの破片になって流れて行くそれに、馬超がぽつりと呟く。
そっと髪に指を差し入れて、抱き寄せる。
何時ものように擦り寄るお前のこめかみに、唇を寄せたが口づけずにきつく抱きしめる。

何もかもを終えた。
一度した決心をすべて燃やした。
あったもの全てを、私達は捨ててしまった。




  灰からは何も生まれないのかな……?

「なぁ、馬超…愛し合おう、私と…もう一度」
「馬鹿を…」
「結婚、しよう」
「……もう、燃えてしまった……」
「まだだ、まだ…」


クリアファイルに、もう一枚のこった、薄い、茶色の文字と罫線の紙。
私達には無縁の、男女ならたった一枚で『家族』を失わずに『家族』になれる、紙。
本当はこうありたい。だから、思わず手にとり持ち帰った。

「愛しているよ、馬超……ずっと傍にいたいんだ……」





今度は二人で、あの紙を取りに行こう。

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