管理人の萌や日常を徒然なるままに。。。
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庭先で、難しい顔をしてしゃがみこんだ従弟を見つけた。
廊下から顔を出すと、その手は泥で汚れている。
「一体お前は何をしているんだ……」
「あぁ、兄上」
何時から座り込んでいたのか。
よっこいしょと立ち上がった馬岱は、
汚れた手で膝の辺りを軽くニ、三度叩いた。
かえって汚れてしまったそこを、
余り後悔の無い声で「あぁあ……」などと嘆く。
「この寒いのに、蒲公英が蕾をつけたんですよ。
頑張れと思って毎日水をやってはみたのですが……」
その言葉に欄干から少し身を乗り出してみれば、
なるほど、季節はずれのか細い蒲公英が、
幾枚かの葉を広げ、小さな小さな蕾をつけている。
「やはり駄目ですね」
「そんなもの、やってみねば解らぬではないか」
するりと、自然に出た台詞だった。
「ふ、くく、あははは」
「な、何がおかしい、岱!」
「だって兄上、」
目尻に浮かんだ涙を拭いながら、
顔を泥だらけにして爆笑する馬岱は、
それでもとても嬉しそうに真っ直ぐ馬超を見た。
「それは趙雲殿の口癖ですよ」
「、ッ」
「昔なら、捨て置けと言って終わったでしょうに、ふ、くくくっ」
「知らん!」
未だ収まらない笑い声を背にして、
真っ赤になった顔を口元だけ隠した馬超。
けれど、彼の脳裏に合ったのは蒲公英でも笑う岱でも無く。
あの日の彼の言葉だった。
「好きな奴?」
「そう、とても振り向いてなどくれそうにない人だ」
「解っているなら、さっさと諦めてしまえばいいのに」
「そんなの、やってみなければ解らぬではないか」
「馬鹿なことを……」
「そうでもないさ」
「……ふん」
「なぁ、馬超」
「うん?」
「私はお前が好きなんだ」
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