【趙馬】闇 趙雲視点

彼の指先は氷のように冷たかった。


彼の甘言は、
言葉に反して酷く孤独に満ちていた。
彼の目の前に立っているのに、
灰の瞳には殺伐とした過去しか映らない。


何度、彼を抱いただろう。
何度、彼に伝えただろう。

その中で、何度、彼の心に触れたのだろう。


私の言葉は、
彼に伝わる形を得ない。
崩れ消える音をどれ程恨んだか知れない。
感情を形にする術の少なさを、
己の未熟を突きつけられた。


それでも。
私は彼に囁く事を止めない。
私は彼に語る事を止めない。
私は彼に叫ぶ事を止めない。

彼の指先が言葉から体温を奪っても、
彼の甘言が言葉から意味を奪っても、
彼の身体が言葉から感情を奪っても、
彼の心が言葉から音を奪っても。

私は、止めることはない。


それが、
彼と愛し合うということならば……。